阿弥陀の謎


大天使ミカエルはいつものように執務を終え女神アフロディテの部屋へ向かった。
が、いつもとなにか様子が違う。
アフロディテの部屋の前で 傍仕えの天使数名が困った様子で立っていた。

「何かあったのですか?」ミカエルは不思議そうな顔をして 天使達に声をかけた。

「ミカエル様」一人が すがるような目でつぶやいた。
そして もうひとりが
「アフロディテ様と かくれんぼ をして遊んでいましたところ 急にご機嫌がお悪くなられて
怒ってしまったのです」
女神と言っても まだ6歳のアフロディテ。しかし 天使達は何がアフロディテの気に障ったのかがわからないまま
部屋を出されてしまっていたのだ。

「仕方がないですね」とため息をついたミカエルは そっと傍仕えの天使たちへ
「今日はもう 貴方達は部屋に戻って休んでよろしいですよ。私が様子を見てきますから」
と伝えた。


傍仕えの天使達が去った後 ミカエルは小さな声で ドアの外から
「アフロディテ」と呼んでみた。
返事はない・・・・よほど気に入らないことがあったのだろう。
でも 気に入らないことがあったからと言って 傍仕えの天使達を追い出してしまうのは困ったものだ。
今度は ちょっと きつい口調で
「アフロディテ 入りますよ」と声をかけ ドアに手を伸ばした。
アフロディテの部屋の鍵は内側からロックはできても 大天使達とアフロディの手で外から開けることができる。
ある意味オートロックだ。

部屋に入ったミカエルは目を疑った。

アフロディテが大好きな大きな熊のぬいぐるみを抱えたまま大泣きしているのだ。
顔は 涙と鼻水でぐちゅぐちゅになっている。
これでは 女神には見えない・・・・・と 思い
ミカエルは失笑しながら持っていたハンカチでアフロディテの顔をぬぐった。
どうやら かなり前から 泣いていたようで エグエグ言っている・・・

ミカエルはアフロディテが落ち着くまでそっと抱きしめていた。


数十分後 アフロディテが ミカエルに「おかえりなさい」と小さな声で言った。
愛くるしい私の女神 ミカエルは 「ただいま」といいながら アフロディテの頬にキスをした。

とりあえず なぜ 傍仕えの天使達を部屋から追い出したのかを聞かねば と 思い ミカエルは
「なにがあったのですか? 皆で楽しくかくれんぼをしていたのではないのですか?」
かくれんぼ それは アフロディテにとって先日地球に降りた際子供たちと遊んだ唯一の遊びだった。
地球から無事帰ってきたアフロディテは毎日のように傍仕えの天使達を相手に
かくれんぼをしているのはミカエルも知っていた。


「だって みんなすぐ見つかるところに隠れるし 女神様にはかないませんとかいって・・・
私も鬼がしたいし 遊びたい。地球で遊んでくれた地球の子供たちのように私も遊びたい!!
アフロディテも友達が欲しいの!!」
そういうとまたアフロディテはエグエグと泣き出してしまった。


ミカエルはぎゅっとアフロディテを抱きあげたまま考えた。

友達か・・・・
確かに 宮殿には友達となる天使はいない なにせすべて成人していて
それも将来有望なものだけが宮殿に仕えている。
現在宮殿への普通の天使達及び子供天使達の出入りは一切禁止している。
だが これでいいのだろうか?
アフロディテは女神とはいえ まだまだ幼い子供だ。
う〜 ん 私だけでは 決断ができないな〜。


「すー すー」かわいらしい寝息がミカエルの耳元で聞こえ始めた。

泣きつかれて眠ってしまったのだろう。

ミカエルはそっとアフロディテをベッドに寝かせ お気に入りの熊のぬいぐるみを横に置いて布団をかけて
部屋をでて長い廊下を歩き 大天使ガブリエルの執務室へやってきた。


「ガブリエルいるか?」
そう言うと同時にミカエルは扉を開けた。
「ミカエル様 どうかなさったのですか?」 夜 ミカエル様はいつも女神アフロディテ様の部屋で遊んでいる
なのに なぜ今ここに???

「いや アフロディテのことで相談があってな」 ミカエルが 執務室のソファーにファサっと腰を下ろして言った。
「アフロディテ様のことですか?...私でよろしければお聞きしますが」ガブリエルは執務室の椅子から立ち上がり
ミカエルの前のソファーへ座った。

「突然なんだが 子供天使数名が宮殿へ立ち入るのを許可したいのだが・・・・」といった後
今日のアフロディテの様子を話した。


話を聞き終えたガブリエルは
「確かに 女神と言ってもまだ6歳 遊びたい盛りの子供。数名でしたら 許可できますが」と真顔で言った。
真顔で言ったのには訳がある。
どうやって 宮殿の出入りができる子供天使を決めるかが問題だ。
遊び相手ということは 友情も信頼関係も出来上がるだろう。
そうすると 自然と 女神アフロディテ様の側近となるだろう。
あの アフロディテ様が側から放すわけがない・・・・・・
そうすると 将来有望な・・・・


「何を悩んでる・・・」ミカエルが ガヴリエルの側近が出してくれた紅茶を飲みながらたずねた。
ガブリエルはちょっとあきれた顔で 
「宮殿の出入りができるような子供天使をどう選ぶかですよ」と言い放った。

「あぁ〜 それなんだが 阿弥陀クジってのはどうだ?」ミカエルは満面の笑みである。

更にあきれるガブリエル。
「阿弥陀クジって あなた 今 地球の日本に入れ込んでますね???
それに 子供天使といっても いずれ宮殿で仕えることができるほどの能力のある子供天使を
みつけないといけないのですよ わかっていますか?」もう 最後のほうは怒った口調になっている。

ガブリエルが怒ろうが 何一つ気にしないミカエルは
「そうか〜 いい案だと思ったのにな。
ならば そなた 現在もっとも知的レベルと身体レベルの高いものを選べばよいではないか」
と 言って 紅茶を飲み干して そのままガブリエルの部屋から鼻歌を歌いながら出て行った。


まったく なんて お方だ。
宮殿の規則を変えろ?
それも 阿弥陀で???
面倒くさいから 私に話を振ってきたのだろう・・・・判っている ミカエル様はそういうお方なのだ。

きっと 今頃 アフロディテ様の部屋で幸せそうな顔して添い寝しているのだろう。


でも このままにしていては いけない。
なんと言っても 大天使ミカエル様の依頼だ(ただの我侭な天使にしかみえんが)


仕方がない・・・・ ちょっと 10歳前後の天使の身体能力データを調べてみるか・・・


こうして ガブリエルはその日は朝まで執務室から一歩もでることができなかった。










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