ルシファー後編


大天使ミカエルが上着の十字架に両手を当てて目を閉じた瞬間 金色に閃光が天井を貫いた。


「あなた誰?」
女神アフロディテはサタンの座っている向かい側の椅子にちょこんと座って尋ねた。
「私は ルシファー」
そうサタンは名を告げた。

ルシファー?

この人はなぜ羽が黒いのだろう。
なぜ 頭から2つヤギみたいな角が生えているのだろう・・・・

「ここはどこ?」アフロディテがルシファーの目を見て尋ねると
「ここは 魔界 貴方のお住まいの天界とはまったく正反対の世界ですよ」と なんとも優しい声でルシファーは返事をした。


ルシファーの側近達は 初めて見る女神を目の前にして驚いていた。

この薄暗い世界がまるで 明るい光で照らされているように アフロディテの周りだけ金色に光輝いていたのだ。
そして いつもは 恐ろしい形相の魔界の主 サタン(ルシファー)までもが微笑んでいる。


ルシファーの優しい声に安心したアフロディテは 先ほどルシファーが差し出してくれたチョコレートをじっと見つめていた。
「どうぞ 女神様 お食べください。」ルシファーは 優しく微笑みながら言った。
「ありがとう」笑顔で返して 早速アフロディテは チョコレートをひとつ口の中に入れた。

「おいしい」そう 言いながら すでに2個目を手に持っている。


なんともかわいらしい女神。
ミカエルが目の中に入れても痛くないほどかわいがっているという噂どおり愛くるしい姿。
そして 恐れを知らない 無垢な女神。
チョコレートをおいしそうに食べるアフロディテの姿を見て ルシファーは自然と笑みがこぼれた。


「これはね あなたのために 地球から先日取り寄せたのですよ。魔界で作られたものは貴方様のお口に合わないと思いまして」
と説明するルシファーに 
「ありがとう」と 満面の笑みで答えるアフロディテ。

「それと・・・」
と言って ルシファーが立ち上がった瞬間 凄まじい閃光に部屋は包まれた。

ルシファーはとっさにアフロディテを抱きしめた。


ルシファーとアフロディテの目の前に 大天使ミカエルの姿が現れた。

「ミカエル」そう 叫んでルシファーの腕からミカエルの足に抱きついたアフロディテ。


「予想はしていたけど 早かったな。 まっ 座れ」
ルシファーはちょっとはにかんだ笑顔でミカエルへ言いながら 自分も椅子に座り
先ほどアフロディテが座っていた椅子をミカエルへ薦めた。


アフロディテを抱き上げ ミカエルは椅子に着席し
「久しぶりだなルシファー。しかし 今はそなたと話している時間はない。アフロディテを連れて帰るぞ」
そう 言いながらアフロディテの頬にキスをした。

「ビジョンか・・・」サタンはちょっと笑ってミカエルへ言った。

ミカエルも軽くうなずき
「どうやって天界へ入ったのかは判らぬが とりあえず そなたが元気そうでなによりだ」と 笑顔で返した。


そう ルシファーが天界を追放されるまで 無二の親友であった。
それが ある日 理由も告げることなく ルシファーは神へ攻撃をし そして追放された。
羽の色や 姿形はかわっても やはり ほんのりと懐かしさが漂ってくる。
しかし 今は 時間がない。
やはり 地球にビジョンを送るのとは勝手が違うらしく かなりエネルギーを消費している
というか 魔界に入った直後からエネルギーを吸い取られていくようだ。
急がねば。

ミカエルはアフロディテを抱きしめたまま立ち上がり 羽を大きく広げた。


「ちょっと まて」ルシファーは椅子から立ち上がり 飾り棚の中のガラスケースに入っているフランス人形を持ってきた。
「これを渡したくてな。 もうすぐ女神は7歳になるのだろう? 女神は天界だけの存在ではなかろう。
一度どうしても お会いしたくてな」となんとも照れくさそうな顔をしてミカエルへ渡した。


ミカエルはルシファーから渡された人形をアフロディテに渡し
「相変わらず 強引だな」と 言って笑った。

アフロディテは 人形を抱きしめ
「ありがとう ルシファー」と言って そっと 手をルシファーの頬にあてた。

優しく微笑むルシファーが アフロディテの手に軽くキスをした瞬間 一瞬だけ昔の姿のルシファーが見えた気がした。

「女神が大人になったら 是非 遊びに来てくださいね」そう優しく微笑むルシファー。

アフロディテとミカエルは見つめあい 同時にルシファーへ笑顔を見せた。


そして ミカエルの大きな羽が一瞬羽ばたき 金色の閃光とともに ルシファーの前から二人は姿を消した。


私も天界に残っていられたら あなたとともに毎日過ごせたであろう。
光が消えていく瞬間 ルシファーは少し寂しい顔を見せた。


天界のガブリエルの部屋では ミカエルが胸の十字架に両手を当てたまま目を閉じて立っていた。

心配する天使達の前から 一瞬ミカエルの姿が消えたかにみえた。

「ミカエル様!!」ガブリエルが叫んだ直後 金色の光に包まれたミカエルと腕にだかれたアフロディテが姿を現した。


「アフロディテ様」ガブリエルが涙を流しながらアフロディテを抱きしめた。

「申し訳ございませんでした。怖い思いをさせてしまって・・・・」泣きながらアフロディテに謝るガブリエルに対し

「ううん。楽しかった。チョコレートとお人形をいただいたの。また今度遊びにいくの」

そう 無邪気に笑うアフロディテ。


ガブリエルを含め大天使たち そして天使達は その言葉に驚いて じっとアフロディテをみつめた。



その夜から アフロディテのベッドには 大好きな大きな熊のぬいぐるみと一緒に
ルシファーからもらった フランス人形が並ぶようになった。










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