約束


アフロディテ は 数千年ぶりに 天界で生まれた女神。
愛と美の女神という意味のとおり 月の光を浴びたような 金髪 そして 金色の目。
無垢という言葉が当てはまるような 白い肌。真紅の薔薇のような唇が その白い肌にとても映える。

優しい色の花が咲き乱れる 大天使達の宮殿で 特に 大天使ミカエルの愛情を一心に受けてすくすくと育ち
ようやく6歳になった。

しかし アフロディテには 大天使達と宮殿に仕える大人の天使達以外遊び相手がいなかった。
そんなアフロディテの最近の楽しみは 宮殿の中心部分にある 水鏡を見ることだった。

水鏡に映る 地球の子供達が楽しそうに遊んでいる姿をみるたび 「お友達が欲しい」と思うアフロディテ。
しかし 宮殿には子供の天使達の出入りは禁止されている。

「友達が欲しい」という思いは 「地球に降りたい」という気持ちに変わっていった。
「地球に降りれば お友達ができる」
「地球に降りれば 一緒に遊べる」
そう思っていたが それも無理。
大天使ミカエルから きつく
「まだ 幼いあなたが地球に降りることは決してしてはいけないこと」と言われていたのだ。


その日も アフロディテは水鏡を夢中でみていた。
水鏡に映る地球の子供達はとても楽しそうに かくれんぼ をしていた。
夢中で見ていた水鏡が一瞬揺らぎ 大きな扉が見えた。
アフロディテはそっと 水鏡に映った扉に触れてみた。
「扉を押せば 地球の子供達と一緒に遊べますよ」
優しい声がアフロディテの心に響いたような気がした瞬間 扉を押してしまった。
瞬く間に 水鏡の中の扉が開きアフロディテの体は渦巻く水の中へ吸い込まれていった。


何が起こったか理解できないでいたアフロディテが着いた先は 先ほど水鏡で見ていた地球の子供達の輪の中だった。
「どこからきたの?」
「名前は?」
「外人?」
「言葉わかる?」
子供達はアフロディテへ質問した。

アフロディテは気づいた。
「羽が無い。洋服も地球の子供達と同じ」
うれしかった。
素直に 「これで お友達ができる。一緒に遊べる」と思った。

「言葉わかるよ。私 アフロディテ お友達になって」満面の笑みでアフロディテは答えた。

「アフロ?・・・・変な名前」
子供達は一斉に笑った。
しかし やはり 同じ子供同士。
「じゃぁ アフロ 一緒にかくれんぼしよう」と


アフロディテは天界のことなどすっかり忘れて 一緒にかくれんぼを楽しんでいた。
鬼になったり 鬼から逃げたり。
なんて楽しいんだろう。
この楽しさがずっと続けばいいのに。


西の空が赤く染まり始めた頃 地球の子供達が
「おうちに帰らなくっちゃ」といい始めた。
「まだ遊びたいよ」というアフロディテ。
しかし 子供達は
「お母さんが心配するから また明日 遊ぼう」
「アフロ バイバイ」
そういい残すと 全員おうちへと帰っていってしまった。


「おうち?」
アフロディテは一人になって 気づいた。
そう まだ幼いアフロディテは 天界への戻り方を知らない。
西の空を赤く染めていた日も沈み やけに輝く月が頭上に現れた。
「どうしよう。私もおうちに帰りたい」
でも 羽もない どうしよう どうしよう
ついに幼いアフロディテは泣き出してしまった。


「ミカエル ミカエル ごめんなさい」


そう つぶやいた瞬間 頭上の月が一瞬裂けたように 稲妻がアフロディテの目の前に落ちた。

天界ではありえない衝撃に さらにアフロディテは両手で顔を覆い
「ごめんなさい ごめんなさい」と泣きじゃくった。

しばらくすると 懐かしい甘い香りが漂ってきた。
天界の宮殿に咲く花々の香りだ。
顔を覆った両手をそっとはずし 目を そっと 開けてみた。


大好きな大天使ミカエルが目の前に立っていた。

「ミカエル!!」
泣きじゃくった顔で 大天使ミカエルへ飛びついた。

大天使ミカエルは小さな小さな愛おしい女神アフロディテを抱きしめて言った。
「なぜ約束を守らなかったのですか? あれほど地球へ降りてはいけないと注意したのに。」

「水鏡が・・・・」
アフロディテは水鏡に映った扉の話を大天使ミカエルへ説明した。


大天使ミカエルは 優しく微笑み しかし きつく一言。
「あなたが約束を破ろう と 思った証拠ですよ。水鏡に映る扉 それは 誘惑です。
ちゃんと反省をして 今後約束を破らないと約束できるのであれば 一緒に宮殿にお連れしますけど」
「うん うん 約束する。」アフロディテは 大天使ミカエルの首にきつく抱きつき何度も言った。


その後 大天使ミカエルに抱きしめられたまま 金色に輝く光の中 アフロディテは天界の宮殿へと戻ることができた。

もちろん 羽も洋服も元にもどって。







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